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映画業界は、娯楽の多様性が広がった現在でも就活生に人気の業界となっています。あなたも記憶に残る映画がきっとあるはず。そのような映画作りに携わりたいと考える就活生は多いです。
しかしながら、映画業界は就職希望者に対して求人が少ないのが現実です。だからといって臆することはありません!
映画に携わる仕事を志向するのであれば、広い職域で調べてみると映画に携われる仕事はたくさんあるのです。
映画業界というのは、映画を制作するだけに留まらず、視聴者への認知度を上げて多くの人に作品を見ていただくマーケティングの仕事もあれば、知財を管理する仕事もまで多岐にわたります。
映画が公開されるまでのフローをザックリ整理すると、次の3つに分けられます。
- 映画の制作
- 映画の配給(上映する映画館の確保)
- 興行(映画館の運営)
これらのフローをすべて自社でおこなう企業もあります。
あなたも映画を観ているとエンドロールに「〇〇製作委員会」などの名称を見たことがあると思います。
これは映画製作における資金調達の方法の一つとして、日本映画界で主流となっています。
この製作委員会方式について、ファーストキャリアで映画業界、現在は投資ファンド業界に身を置いている私の視点から少し解説します。
製作委員会は「会社」ではなく、日本における民法上の「任意組合」にあたる組織であり、法人格を持たないという独自性があります。
この製作委員会方式の独自性を際立たせているのが、投資家と事業者が同一である、という点です。
複数の投資家から資金を集める仕組みは、映画業界独特のモノではなく、例えばデベロップメントや油田開発を行う場合、特別目的会社などの法人を事業母体を擁立することが多いものの、このケースでの資金調達の仕組みは、基本的に投資家と事業者は別々です。
これは投資家と事業者の役割を分けておくことで、投資家の立場にしてみると自分たちがノウハウを保有していない事業領域に参加することが可能になり、また事業者としては、同じ産業内からだけでなく、より幅広い資本市場から資金を調達することが可能になってきます。
このように特別目的会社を母体とした資金調達方法は、資金を提供する投資家と、ノウハウを提供する事業者が、それぞれが持っているリソースを提供することで成立しているというわけです。
製作委員会方式が特徴的な点は、映画製作、その作品の著作権運用を行う事業者が、同時に投資家でもあるという点です。
つまり、製作委員会方式では投資家と事業者を明確に分けるのではなく、興行会社、配給会社、制作会社、タレント事務所、広告代理店、場合によってはテレビ局など、映画事業に従事するエンターテインメント産業の事業者が、製作委員会に出資する投資家としての顔も併せ持っていることが挙げられるのです。
これについては理にかなった方法ではあるものの弊害もいくつかあり、今後的には改善の余地はあるものの、各委員は事業者として見込める収入の範囲内のみにおいて、製作委員会に出資しているのが現状です。
このことからわかるように、別の配給会社や興行会社と連携する場合もあるので映画の制作から興行までの過程で必要とされる職域も広いのです。そのため業界全体だけでなく、各企業・各職種の詳細な情報を集めた上で自分の志望を定めていくことが大切です。
また、最近のトレンドとして、映画館に足を運んでもらえるように臨場感を出す4DXやMX4Dのような「次世代シアター」も好評となっています。必要なものが溢れかえっている現代では「モノ消費よりコト消費(体験)」にニーズがシフトしているので、今後はVR機器などの最新テクノロジーに注目するのも重要です。
映画業界の業績推移と業界規模(2021年)
経済構造実態調査によると、ヒット作に恵まれた2019年の映画館収入は前年比0.1%増の2,938億円とであったものの入場者数は、前年比5.6%減の1億6,239万人となりました。入場者数は前年から961万人が減少し、2年連続のマイナスとなりました。
さらに2020年からの新型コロナウィルスの感染症予防対策により、各地の映画館では休館や入場制限が行われ、対策では席を1席ずつ開けるなどしていることから、収入は大幅に減少しています。
2020年から2021年の映画業界大手3社の決算では、売上高に注目すると主要映画会社3社そろって大幅な減収を記録していることがわかります。
- 東宝:前年比27.0%減/1,919億円
- 東映:前年比23.8%減/1,076億円
- 松竹:前年比46.2%減/524億円
そんな状況においても、2020年10月に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、興行収入が100億円を突破し、歴代最速の10日間で達成しました。その後も記録を更新し続け、『千と千尋の神隠し(13’)』の316億円を抜いて歴代1位を獲得しています。
映画業界の規模は、主要対象企業16社の売上高の合計5,868億円と、決して大きい方ではありません。しかしながら製作委員会方式のメリットもあり、業界一丸となってヒット作を出し続けているので安定した業界といえます。
平均年収は621万円と、全業界の中では平均に近いものの企業ごとの格差(300万円~900万円)が大きいのが特徴です。
映画業界の職域を細分化してみる
まず思い浮かぶのは、「映画監督」でしょう。映画監督は映画制作の中心として、映画全体の構成を考えて、配役も考えたり、各スタッフに指示を出したりします。
映画俳優・役者は映画に出演する仕事として、表に出る役目を担います。裏方である脚本制作やシナリオライターは、映画のストーリーを作り、カメラマンや音声が映画の撮影、照明は明るさや暗さの調整、音声の収録あるいは編集をします。
美術・デザインは役者の専門家がメイクに携わり、ロケハンや空間作りを行います。
そしてCG制作であったり、映画の撮影記録などをおこなうスクリプターも映画制作に携わる職種になります。そして監督の指示に基づいて撮影された映像を編集する仕事も重要です。これらの他にも、翻訳は他言語の字幕を作ったり吹き替え用の音声を作る仕事になります。
多くの人が携わり、一本の映画になれば、制作会社は配給会社に映画の上映権を買う「買い付け」をしてもらい、配給会社では映画館との交渉を行う「ブッキング」や映画のPRをする「宣伝・プロモーション」をおこないます。
ここでようやく映画館で上映が成され、観客が映画を楽しめるために劇場運営が行われています。
映画業界の主要3社を紹介
以上のように、映画業界は職種の数が多いですし、映画制作から配給・公開までの仕組みも多様にあり、先ほども説明したように、年収や業績といった面でも企業ごとの差が大きいのが現状となっています。
したがい、志望企業の選択をする前には十分な企業研究を行うことはもちろんのこと、自分自身が思い描くキャリアプランが実現できそうか考えた上で選択することが重要といえるでしょう。
それでは映画業界には実際にどのような企業があり、それぞれどのような特徴の企業なのかを見ていきたいと思います。
東宝株式会社(年)
商号 :東宝株式会社
設立 :1932年8月
資本金:10,355,847,788円
代表者:取締役社長 島谷 能成
従業員:単体 357人(嘱託31人を含む)/グループ 3,305人(嘱託588人を含む)
https://www.toho.co.jp/company/info/profile.html
東宝株式会社は、売上高・業界シェアトップとなる日本の映画業界におけるリーディングカンパニーです。映画の制作から配給、興行までを手がけており、付帯事業として、演劇やデベロップ事業、海外における事業展開も積極的に行っています。
経営理念は「健全な娯楽を広く大衆に提供すること」
この理念に基づいて、数多くの作品を提供してきました。記憶に新しいところでは、2016年8月公開の映画『君の名は。』で自社製作作品中、最高の興行収入である250億3千万円を達成し、同年には『シンゴジラ』のヒットもあって年間興行収入は854億円となり、過去最高をマークしました。
東映株式会社
商号 :東映株式会社(TOEI COMPANY, LTD.)
設立 :1949年(昭和24年)10月1日 ※創立年月日1951年(昭和26年)4月1日
資本金:11,707,090,002,928円
代表者:取締役社長 手塚 治
従業員:372名 2021年3月1日現在
https://www.toei.co.jp/company/info/outline/
東映株式会社も日本を代表する映画会社の1つとして、売上・業界シェア第2位となっています。同社の特徴としては、映画の製作から興行までを1社でおこなっている点にあります。
また付帯事業では、テレビ番組制作から携帯電話やパソコン向けのソフト配信、イベント企画・運営など、実に幅くカバーしており、総合エンターテイメント企業として、多くの人に楽しさや感動を届ける方向を目指すとしています。
また、スマートフォンや3Dなど映像を楽しむ方法が多様化してきたことにも対応し、新しいスタイルでのエンターテイメント作りにも、積極的に投資するなど注目すべき企業といえます。
松竹株式会社
- 商号 :東映株式会社(TOEI COMPANY, LTD.)
- 設立 :1949年(昭和24年)10月1日 ※創立年月日1951年(昭和26年)4月1日
- 資本金:11,707,090,002,928円
- 代表者:取締役社長 手塚 治
- 従業員:372名 2021年3月1日現在
松竹株式会社は、日本老舗の映画会社です。こちらも事業領域は広く、映画制作から配給・興行だけに留まらず、演劇やデベロップ事業、その他にもECサイトの運営やキャラクター商品の企画・販売なども行っています。
同社の特徴は老舗企業という事で、演劇分野における日本の伝統文化である歌舞伎を支え続けている企業として有名です。2005年からは歌舞伎と映画を組み合わせ、歌舞伎をスクリーン上映する「シネマ歌舞伎」をスタートさせ注目を集めています。
同社の理念は、日本文化の伝統の継承・発展・世界文化への貢献をおこなうとともに、時代のニーズを捉えた豊かで多様なコンテンツを全世代に届けることとしています。
日本の伝統芸能分野から最新のニーズ・テクノロジーに合わせたエンターテイメントの発信するなど、幅広い範囲に事業領域のある企業です。
まとめ
この他にもCM製作やアニメーション領域に強い会社など様々ありますので、業界研究をして納得できる企業を見つけてみましょう。
映画に関わる仕事をしたいなら、最初に志望するのは映画業界でしょう。しかし業界研究の結果、自分の適性と合わなそうに思えるのであれば、映画に関係する業界も検討してみましょう。
もちろん、広範囲に応募するのも大切になります。就活において、応募数と内定数に相関関係はないものの、より広い範囲の企業に応募することで、業界の関係を理解することが重要なのです。
そうした業界には、テレビ局や広告代理店などが挙げられると思います。それらについては改めて記事にしたいと思います。
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