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わたしは栽培方法という枠組みではなくアグリハックという手法で高品質かつお求めやすい価格という出口戦略にのみ向かって作物を作っています。
したがって、有機栽培だ、自然栽培だ、という型にはまることなく野菜を栽培しているということになります。
と、いいますのも私は農業参入する前には、一介のサラリーマンをやっていましたし、暮らしていた場所も都市部だったので、中山間地における作法はまったく理解していませんでした。
私の実践するアグリハックはあまりに異端らしく、周りの農家さんからは「何やってるん?」と不思議がられます。
どういうのもかといいますと通常では異常ともいえるチッソの施用と多湿かん水で野菜を育てるということです。
作物栽培における制限要因を何が解除するのかを知りたいというのが出発点でした。
また安くはないビニールハウスへ投資するにあたって最大のレバレッジを求めるためにも生産量を異常値に持っていきたいという狙いがありました。
微生物の生存環境を最適化させることも加えて、土壌がまるで湿地のような泥状になるほどの多湿多かん水をします。
作物の生育する中で制限要因はなにか?
それは土壌中に水が無尽蔵に存在することで初めて植物はその潜在能力を最大限に引き出すことができるということです。
多かん水栽培を行うため、ビニールハウス内は常に多湿環境となります。
植物が蒸散を活発に行うことで、気孔から多くの炭酸ガスを取り込みつつ、根から葉に多くの水と無機養分を送り込んでいるものと思われます。
これでハッキリしたのは酸素欠乏で根腐れが起こるわけではないという事です。
水が飽和状態にある土壌で根の生長を制限する要因は酸素欠乏ではなく、特定の土壌細菌ではないのかと考えています。
土壌中の水は重力と密接な関係にある毛細管現象によって土壌中を移動します。
作土層よりも深い土壌では隙間がほとんどないため、水が下に落ちていく重力よりも毛管力が大きいため、土壌水は重力のまま下にはいかないのです。
常に下層土壌にまで多量の水を含んでいることで、高濃度の肥料成分が表層に集積していても、根の障害が起こらないというメカニズムです。
どれくらい高濃度といいますと6m間口で40mの長さのビニールハウスで25kgのチッソ施用でも過剰害は出ませんでした。
土壌微生物環境が最適化されていれば、水浸しのような土壌環境でも根の機能は健全に維持されます。
光合成の原料である水が常に根に供給されることで多量のチッソ成分にも過剰障害となることもなく、比較的小さな根域でも、植物の茎葉部は旺盛に生長するのです。
半滞水土壌では土壌中の水があまり混ざらないようでチッソ成分は土壌の表層に集積していました。
これこそが多かん水栽培が有効である原理といえるでしょう。
根を深く伸ばすことに多くの光合成産物と代謝エネルギーを消費することなく、表層の小さな根だけで濃い無機成分を最大限に吸い上げることができるためだと考えられます。
そこで次回には、具体的な作物を例に挙げながら効果などを解説していきたいと思います。
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