トマトを育てていると尻腐病や裂果などの障害から思った以上に収量を落としてしまって残念な思いをされたことがあると思います。
わたしも今までいろいろトマトの品種の栽培を手掛けてきました。
露地栽培で育てるソバージュ栽培なんかでは裂果をどうしても克服できませんでしたが解決の糸口がやっとみつかったところです。
障害が起こる要因について考察して、それらを防ぐためにはどうすればよいかを解説します。
トマトの生理障害の主な要因は、肥料成分によるものや温度管理・水管理によるものがあります。
また人為的な外部要因によっても起こります。
これらの主な要因別に、それぞれの障害について説明していきましょう。
肥料成分はどう考えたらいいのかというと、これはシンプルにチッソをやりすぎるからだねってことです。
尻腐病
トマトの尻腐れは生理障害の代表格です。
幼果期のカルシウム欠乏症として知られていますが、石灰を施用しても完全には予防できません。
トマトがカルシウムを吸収しにくくなるには別に原因があるのです。
ここにその3大要因をあげてみたいと思います。
①チッソの過剰施用
トマトの生育途中でも夏期にチッソを多く使用すると尻腐れは簡単に発生します。
これは土壌中にチッソが多くなると、トマトのカルシウム吸収量が減るからです。
②土壌の水分不足
トマトは、土壌に養液として解けているカルシウムを根から吸収するので、土壌の水分が不足すると吸収できなくなるからです。
③高温
夏と冬では土壌溶液中に溶けているカルシウム濃度にわずかに差があって、夏は少し薄くなっています。
例をあげると、砂糖は温度が高くなるほど溶けやすくなりますが、カルシウムは温度が低くなる方が溶けやすい特性があるからです。
海のサンゴなどは炭素カルシウムの塊ですが、南の海ではたくさんできるので冷たい海では成長しにくくなるのです。
また炭酸カルシウムや硫酸カルシウムは高温になると、溶けにくくなります。
夏場に尻腐れが多いのは、このカルシウムの溶解度と関連がありますことがわかると思います。
チッソ欠乏症 C/N比の高い有機物はNG
これは過剰の欠乏という症状のひとつです。
つまりチッソ肥料を施用しているのに生じるチッソ欠乏だということです。
いち部分だけの葉が薄くて、黄色くなります。
こうした葉色が黄色くなる症状はチッソ欠乏の特徴です。
原因は、生のおがくず等、C/N比の高い資材を施用が過剰になっているということです。
有機物の土壌施用は大切ですが、おがくずなどはC/N比400~1300でチッソ成分をほとんど含まないので、有機物を分解する微生物が肥料のチッソを食べてしまいます。
つまりトマトが吸収すべき肥料成分が微生物にとられてしまうのです。
これを「有機物によるチッソ飢餓現象」といいます。
C/N比10~20くらいの堆肥の方がよいのです。
すじ腐果 カリ肥料の最適化がポイント
外観からなかなか判断がつきにくい症状ですが収穫したトマト果実を切ってみると、果実の維管束部分が褐色になっていることがあります。
これがすじ腐果というやつです。
土づくりに堆肥を施用したり、三要素を含んだ化成肥料を使用している場合は、ほどんと問題がないのですが、堆肥を施用しなかったり、化学肥料でもチッソだけの肥料を使ったり、有機肥料にこだわってダイズ油かすなど有機肥料だけで栽培していると、生じる障害です。
これはカリウム欠乏障害です。
葉は葉先から黄化する症状を示します。
有機化成肥料には、硫酸カリウムや塩化カリウムが添加されているので、心配ないのですが、純粋の有機肥料はカリ成分がチッソに比較して非常に少ないのです。
トマトはカリがとても大好きでたくさん吸収するのです。
チッソ過多で、日照条件が悪いと簡単にすじ腐果になるので注意しましょう。
でも対策も簡単です。
カリ肥料を普通に与えたらよいのです。
マグネシウム欠乏症 カキ殻神話崩壊
土壌ph調整剤としては、苦土石灰が基本ですが最近のトレンドは有機志向でカキ殻を使用する農家が増えています。
苦土石灰には、カルシウムだけでなくマグネシウムも多く含んでいます。
ところがカキ殻はマグネシウムをほとんど含んでいません。
堆肥も施用せず、一般の三要素だけを含んだ肥料だけで栽培していますと、マグネシウム欠乏症がトマトに発生することがあります。
トマト果実は肥大期にマグネシウムを多量に必要とするため、不足すると、マグネシウム欠乏症となるのです。
葉は果実の周辺から葉脈の緑を残し、葉脈間が黄色くなります。
マグネシウムは、光合成に必要な葉緑素の骨格に必要なだけでなく、光合成でできたデンプンをショ糖の形態でトマト果実に転流させるのにも必要です。
マグネシウムが不足すると、果実も肥大しにくく、糖度が低くなります。
おいしいトマトをつくるにはマグネシウムも必要なのです。
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