暦の上では秋とはいえ、まだ夏の暑さが残る毎日ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。 夜風にふと涼しさを感じる瞬間も増え、静かな読書の時間に思いを馳せる方もいらっしゃるかもしれません。
さて、本日は私たち、言の葉を綴じる杜から、心を込めて送り出す一冊の新刊小説をご案内させてください。 新鋭・又吉 秋香さんのデビュー作となる、『クレッセントの夜に』が、ついにリリースとなりました。
「大丈夫」と言えない夜に、この物語を。
仕事に、人間関係に、そして自分自身に、少しだけ疲れてしまった。 都会の喧騒の中で、いつの間にか見えない鎧をまとい、自分自身の「好き」という感覚さえ見失ってしまう――。 本作の主人公・倉田美月は、そんな切実な想いを抱える、現代を生きる私たち自身の姿でもあります。
物語は、彼女が終電を逃した夜、偶然迷い込んだ路地裏のバー「Crescent」の扉を開けるところから、静かに動き出します。そこで寡黙なマスター・高遠朔が差し出す一杯のカクテル。それは、言葉にならない心の声に、ただ静かに寄り添ってくれるような、不思議な温かさを持っていました。
私たちがこの物語に強く惹かれたのは、主人公が劇的な成功を収めるからではありません。一杯の飲み物が、一枚のレコードが、一人の静かな聞き手が、凍りついた心をゆっくりと解きほぐしていく。その繊細で、どこまでもリアルな心の変容を、又吉秋香さんは見事な筆致で描ききっています。
古内東子さんの名曲『大丈夫』が、物語になった。
実はこの物語、著者である又吉さんが、長年愛聴してきたという古内東子さんの名曲『大丈夫』に着想を得て生まれました。あの流麗なメロディと、優しくも切ない歌詞の世界観が、美月と高遠の物語の隅々にまで、美しい余韻となって響き渡ります。音楽ファンの方にも、ぜひお楽しみいただきたい一冊です。
自分自身を偽らず、自分の足で立つことの痛みと、その先にある本物の輝き。 読み終えた後、きっとあなたの心にも、温かい光が灯るはずです。 私たちは、この物語が今を生きる多くの人に届くべきだと、強く信じています。
この秋、あなただけの静かな時間に、ぜひ『クレッセントの夜に』をお供させてください。
(言の葉を綴じる杜 編集部より)
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